起立性調節障害(OD)の根本原因は脳疲労?漢方薬局が考える改善への道

「朝、なかなか起きられない」「立ちくらみがひどくて学校に行けない」「だるくて何もする気が起きない」
もしかしたら、それは起立性調節障害(OD)かもしれません。起立性調節障害は、思春期のお子さんに多い病気ですが、大人になって再発するケースも少なくありません。
このページでは、起立性調節障害の症状、原因、そして改善策について、漢方薬局の視点から詳しく解説します。
起立性調節障害(OD)とは?
起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)とは、自律神経のバランスが乱れることで、立ち上がった際に血圧が適切に調整できず、脳への血流が低下する病気です。
起立性調節障害の主な症状
朝起きられない
立ちくらみ、めまい
全身倦怠感
食欲不振
動悸
頭痛
腹痛
不眠
集中力・判断力の低下
イライラ
乗り物酔い
失神
これらの症状は、特に午前中に強く現れやすく、午後から夕方にかけて回復する傾向があります。
起立性調節障害(OD)の原因
起立性調節障害の主な原因は、自律神経の乱れです。
自律神経は、私たちの意思とは無関係に、呼吸、消化、体温調節など、生命維持に必要な機能をコントロールしています。自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経があり、この2つがバランスを取りながら働いています。
しかし、何らかの原因でこのバランスが崩れると、起立時に血圧を適切に上げることができず、脳への血流が低下して、様々な症状が現れてしまうのです。
自律神経の乱れを引き起こす要因
過度なストレス:学校、部活、塾、人間関係など、様々なストレスが自律神経のバランスを崩す原因となります。
不規則な生活:夜更かし、朝寝坊、睡眠不足は、自律神経のリズムを乱します。
運動不足:適度な運動は自律神経のバランスを整えますが、運動不足は血流を悪化させ、自律神経の乱れにつながります。
水分不足:水分不足は血液量を減らし、血圧を下げやすくします。
遺伝的要因:起立性調節障害には、家族歴が関係している場合があります。
脳疲労:過度の情報処理、ストレス、睡眠不足などが続くと脳が疲労し、自律神経の働きが低下することがあります。
副腎疲労:ストレスに対抗するホルモンを分泌する副腎が疲弊すると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
食事の影響:食事を抜いたり、甘いものばかり摂ったりすると、血糖値が乱高下し、自律神経に負担をかけます。
重金属の蓄積:体内に重金属が蓄積すると、デトックス機能が低下し、自律神経の働きに悪影響を及ぼす可能性があります。
遅延型フードアレルギー:アレルギー反応が慢性的に起こることで、自律神経のバランスを崩すことがあります。
起立性調節障害(OD)と脳疲労の関係
近年、脳疲労が起立性調節障害の重要な要因の一つとして注目されています。現代社会は情報過多であり、スマートフォンやパソコンの普及により、常に脳が情報処理を強いられています。
脳は、自律神経の中枢である視床下部と密接な関係があり、脳が疲労すると自律神経の働きが低下し、起立性調節障害の症状が現れやすくなります。
脳疲労が自律神経に与える影響
自律神経のバランスの乱れ:脳疲労により交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、血圧や心拍数の調整がうまくいかなくなる。
脳血流の低下:脳疲労は脳の血管を収縮させ、脳への血流を低下させます。これにより、めまいや立ちくらみ、頭痛などの症状が悪化する。
睡眠の質の低下:脳疲労は睡眠の質を低下させ、不眠や睡眠障害を引き起こしやすくなります。睡眠不足はさらに脳疲労を悪化させるという悪循環に陥ります。
起立性調節障害(OD)のタイプ
起立性調節障害は、症状の現れ方によって、主に以下の4つのタイプに分類されます。
起立直後性低血圧(INOH): 立ち上がった直後に血圧が急激に低下し、回復に時間がかかるタイプ。
体位性頻脈症候群(POTS): 起立時に血圧は低下しないものの、脈拍が著しく上昇するタイプ。
神経調節性失神(NMS): 起立中に突然血圧が低下し、失神や立ちくらみを起こすタイプ。
遷延性起立性低血圧: 起立後、数分経過してから徐々に血圧が低下するタイプ。
最近の研究では、これらのタイプに当てはまらない、過剰反応型と脳血流低下型の2つのタイプも確認されています。
起立性調節障害(OD)の診断
起立性調節障害の診断には、以下の様な方法が用いられます。
問診:症状、発症時期、生活習慣などを詳しく確認します。
新起立試験:仰向けで安静にした後、立ち上がって血圧や脈拍の変化を測定します。この検査により、起立性調節障害のタイプや重症度を判断します。
血液検査:貧血や甲状腺疾患など、他の病気を除外するために行われます。
起立性調節障害(OD)の改善策
起立性調節障害の改善には、薬物療法と非薬物療法があります。
非薬物療法
規則正しい生活:毎日同じ時間に寝起きし、睡眠時間をしっかり確保しましょう。
ゆっくりとした動作:急に立ち上がらず、30秒程度かけてゆっくりと起き上がりましょう。
水分・塩分摂取:こまめな水分補給を心がけ、1日に1.5~2リットルを目安に水分を摂りましょう。塩分も意識的に摂りましょう。
適度な運動:ウォーキングなどの軽い運動を習慣にしましょう。
ストレス対策:ストレスの原因を理解し、解消するように努めましょう。周囲の理解も大切です。
ツボ押し:自律神経を整える効果が期待できるツボ(労宮、合谷、神門、内関、肩井、百会、安眠、膻中、湧泉、三陰交、天柱など)を刺激しましょう。
腹式呼吸:腹式呼吸は、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。
お腹ほぐし整体:お腹のしこりを揉みほぐすことで、内臓の緊張を緩和し、自律神経を整える効果が期待できます。
薬物療法
非薬物療法で改善が見られない場合は、血流を改善する薬や、自律神経を調整する薬が用いられることがあります。
漢方薬によるアプローチ
漢方医学では、起立性調節障害は、身体のバランスが崩れた状態と捉え、体質や症状に合わせて漢方薬を処方します。
特に、以下のような漢方薬が用いられることがあります。
気虚:体力がなく、疲れやすいタイプには、補中益気湯、十全大補湯など
血虚:貧血気味で、立ちくらみやめまいが強いタイプには、当帰芍薬散、四物湯など
気滞:ストレスが多く、イライラしやすいタイプには、加味逍遙散、抑肝散など
水滞:むくみやすく、冷えやすいタイプには、五苓散、苓桂朮甘湯など
漢方薬は、体全体のバランスを整えることで、根本的な改善を目指します。
起立性調節障害(OD)と間違えやすい病気
起立性調節障害は、うつ病と症状が似ているため、間違われることがあります。
しかし、うつ病は一日中症状が続くのに対し、起立性調節障害は午前中に症状が強く、午後から回復するという特徴があります。
また、慢性疲労症候群でも、起立性調節障害と同様の症状が現れることがあります。
起立性調節障害と診断された場合も、副腎疲労がベースにあるケースも多いので、副腎のケアも念頭に置いて治療を進めていくと良いでしょう。
周囲の理解とサポート
起立性調節障害は、怠けや気のせいではなく、身体の病気です。
周囲の理解とサポートが、患者さんの回復には不可欠です。
「怠けている」などと𠮟責したり、無理やり学校に行かせたりするのはやめましょう。
最後に
起立性調節障害は、適切な治療とケアを行うことで改善が期待できる病気です。
もし、お子さんやご自身が起立性調節障害の症状で悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、専門機関に相談してください。
当薬局でも、漢方薬によるサポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。
漢方の緑ヶ丘薬局
薬剤師 神谷 繁
薬剤師名簿登録番号
第221780号